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**基盤研究(A)(1) [#tf81e5eb]
~''H7-8年度,計7,300千円(代表者:灘岡)''
~''沿岸空間デザインのための統合型環境空間シミュレータの開発と総合的空間評価法の確立」''
~概要:
~本研究は,沿岸空間デザインに関して,「景観デザイン」の域を出ない従来のデザイン論の限界を打破し,より多面的な観点からの「トータル空間デザイン論」を確立すべく,景観,音環境,大気・日射・温熱環境,水質・生態環境,漂砂・飛砂・飛塩環境等の各サブシステムに関するシミュレータを開発し,それらを統合した形の「統合型環境空間シミュレータ」を構築することにより,トータル空間デザインのための強力な支援システムを実現することを目指したものである.具体的には,本研究では,上記のサブシステムのうち景観と音環境に関するシミュレータがほぼ開発済みであることから,大気・日射・温熱環境と水質・生態環境,および漂砂・飛砂・飛塩環境に関するシミュレータを,さまざまな現地観測によって得られた知見に基づいて開発することに主眼を置いた.
~まず,大気・日射・温熱環境に関しては,東京湾奥に位置する千葉県幕張海岸において,海岸微気象の本格的な現地観測を行い,海岸空間の微気象および温熱環境特性を明らかにした.そしてその結果を踏まえて,海岸微気象シミュレータを開発するとともに,屋外環境下での人体の温熱環境指標を考案し,それをこのシミュレータに組むことにより,砂浜や植生配置等の空間デザインに対応する温熱環境の数値シミュレーションを可能とした.水質・生態環境に関しては,閉鎖性水域(東京湾奥の千葉県稲毛海岸)と外洋に面した開放性水域(茨城県鹿島灘)の両方で現地観測を行い,それぞれの特性を把握するとともに,数値シミュレーションによりそれらの基本特性を再現することを試みた.さらに,漂砂・飛砂・飛塩環境に関しては,鹿島灘に面する運輸省波崎海洋観測研究施設(HORS)背後の砂浜や海岸林での特に塩分環境に関する現地観測を行い,海岸植生の環境負荷としての大気および地下水中の塩分環境の実態を明らかにした.また,飛塩および地下水塩分環境の数値シミュレーションを行い,現地観測データの特徴を再現することに成功した.
~さらに,沿岸空間認識の問題に関して,人の動態形態から見た水際部緑地の空間特性を実証的に明らかにするとともに,観光地を対象とした海岸景観の記述表現を分析し,海岸の景観現象と人の認識構造との関係の考察を通じて,海岸景観の印象を規定する要因と,その認識上の組立を把握することに成功した.