謝辞

本日は盛大な学位記授与式を挙行していただき,諸先生方,ご来賓の皆様に修了 生を代表して心から感謝申し上げます.また,只今は伊賀学長ならびに来賓の方 々よりご祝辞と励ましのお言葉を頂き,重ねて御礼申し上げます.また,充実し た研究生活を送るために欠かすことのできなかった,研究室の皆様方のご指導, 家族の協力に心から感謝の意を表したいと思います.

理工系総合大学として,これまで多くのすぐれた人材を輩出してきた本学を修了 することを,一同大変誇りに思います.

私事で恐縮ですが,生命の神秘や,自然の中にある崇高なものを探求したいとい う思いで,五年前に他大学の全くの異分野の学部から本学大学院に入学いたしま した.初めは全くの新しい分野と学ぶべき基礎知識の多さに圧倒させられました が,サンゴ礁生態系の保全をテーマに,本学の大変恵まれた研究環境のもと,存 分に研究に打ち込むことができました.その傍ら,国際的に幅広く門戸を開いて いる本学の方針のおかげで,研究室内外でさまざまな国籍やバックグラウンドを もった,素晴らしい仲間との出会いにも恵まれました.彼らとの交流を通じて, 互いの文化・言語・社会的背景について学ぶ機会を与えられたと同時に,日本と いう,豊かで安全と自由が確保されている国において,それを十分に認識し活か し貢献しきれていない側面を客観的に強く意識するようになりました.特に,戦 争で日本とは深い繋がりのある太平洋の発展途上の島々を研究調査で訪れた時, 水面下で静かに,けれども確実に崩壊しつつある自然環境と人々の暮らしを目の 前にして,研究テーマを超えて日本人として今後何ができるのかということを深 く考えさせられました.太平洋に浮かぶ真珠,と称されるそれらの島々には,そ の崩壊や危機的状況を知ることなく,今日も,日本人観光客が訪れています.

「大切なものは,目には見えない」というのはサン=テグジュペリの有名な一節 ですが,研究においても,本当に取り組むべき大切な課題は,すぐ目につく問題 だけではなく,未だ顕在化すらされていない,水面下にも潜んでいることを常に 心に留めておきたいと痛感いたしました.このような貴重な経験の機会を世界水 準の研究を通じて与えてくださったことも,心から感謝申し上げたいと思います.

私たち修了生は,これから様々な思いを胸にそれぞれが選んだ道へと旅立ちま す.今,社会は国境を越え,グローバル化が一層進んでいます.そのような中で 私たちは単に国という枠にとらわれず,視野を世界全体へと拡げ,国際人として の資質を身に付け,各々の課題や責務に対して積極的に対処していかなければな りません.私たちは本学で学んだことに誇りをもち,広い視野と世界水準の研究 で得た知識と経験を発揮し,社会の発展に広く貢献して行きたいと思います.

最後になりましたが,今日までご指導を下さいました伊賀学長をはじめとする諸 先生方,職員の皆様,研究室の仲間たち,そしてあたたかく見守ってくださった 私たち家族の皆様に心より御礼申し上げますとともに,東京工業大学のさらなる 発展を願い,修了生一同の感謝の言葉に代えさせて頂きます.