大規模白化後の造礁サンゴ類の回復過程において、サンゴ幼生の加入は重要となってきます。私たちは、沖縄西方海域の慶良間列島と沖縄本島西岸域を結ぶ海域を対象に、物理的・生物的な方面より総合的にサンゴ幼生の広域輸送・加入過程について調査・研究を進めています。

具体的には、表層流のパターンを知るため、GPS搭載漂流ブイによる表層粒子のラグランジュ的追跡、短波海洋レーダによる広域表層流の測定や、幼生の分布を知るためにプランクトンネットによるブイ周辺を含む広域多点幼生採集を行なったり、また、定着基盤を用いた加入量調査、現地観測サンゴ幼生の室内実験等を行なってきました。

現地調査とは別に、慶良間列島内および周辺海域での高空間解像度水深マップを用いた海水流動数値モデル開発に関しても検討しています。

2001年には、サンゴの産卵後、漂流ブイが半日から2日間は慶良間列島内を潮汐流によって漂い、その後、一部は慶良間列島の外に流れ、産卵後4,5日で東向きの早い流れによって沖縄本島に到達したこと、本島に到達したブイ周辺で幼生が採集されたこと、到達までの期間と幼生の定着までの期間が一致することがわかり、実際に慶良間列島から沖縄本島へ幼生が到達し、定着する可能性が示されました(図1−4)。

2002年には、広域多点におけるサンゴ幼生採集を行ない、サンゴの産卵後、実際に幼生が広域に分散している様子をとらえるとともに、漂流ブイの追跡やHFレーダの解析により、表層流は沖縄本島西岸だけではなく、慶良間列島にも回帰することを明らかにしました(図5, 6)。また、定着基盤の調査(琉球大学酒井先生担当)によって、親サンゴが少ない沖縄本島へ幼生が加入していることが観察され、慶良間列島など他の海域から供給があったことが裏付けられました。

これより、慶良間列島海域は沖縄本島西方海岸域へのサンゴ幼生の重要な供給源の1つとなり、サンゴ礁回復へ寄与すること、また、慶良間列島自身にも自己加入(self-seeding)し、その場所のサンゴ群集の維持にも貢献していることが考えられました(図7)。

主な結果

2001年
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図1 航空機から観察されたスリック図2  GPS搭載小型漂流ブイとその経路
サンゴの産卵翌日、写真のような帯状のスリックが慶良間列島の南側に形成されていました。GPS搭載小型ブイ8個を、慶良間列島海域においてサンゴの産卵後放流し、追跡を行いました。その結果、ブイは慶良間列島内を半日〜2日漂流後、慶良間列島の外に漂流し、複雑な経路をとりながら産卵後約4,5日で沖縄本島西岸に到達しました。以前より、慶良間列島から本島へ到達する可能性は指摘されてましたが、本研究ではじめて、幼生の供給経路と日数を示すことができました。
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図3 漂流ブイ周辺におけるサンゴ幼生の出現数の変化図4 サンゴ幼生の探索行動と定着率に関する室内実験結果
ブイ周辺のサンゴ幼生の数の時系列変化の一例です。6月8日には表層をスリック(卵や幼生の集積帯)が漂い最大4.2×107個体・m-3の卵・幼生が分布しました。数日後、沖縄本島西方海域に到達したブイ周辺でも、幼生が確認されました。室内実験より幼生の探索行動(と定着率の時系列変化を調べました。図は、一斉産卵を行う種、ウスエダミドリイシの結果です。本種の幼生の探索行動のピークは4日目に見られ、受精後10日〜14日には定着のピークが見られました。
2002年
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図5 GPS搭載小型漂流ブイの軌跡 (2002年)図6 サンゴ幼生の分布
2001年とは異なり、ブイの投入後、約4日間かけて、慶良間列島に回帰する流れが観察されました。広域多点におけるネット採集により、慶良間列島-沖縄本島間を、幼生が広域に分散していることが観察されました。
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図7 慶良間列島−沖縄本島間のサンゴ幼生の分散パターン
1)沖縄本島西岸へ分散・・・サンゴ礁の回復に寄与
2)慶良間列島に回帰・・・親となるサンゴ礁の維持に寄与

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