琉球列島のサンゴ礁は裾礁とよばれる地形をしており、陸域から水深約2mと浅い礁 (礁池)が岸1km程広がっています。礁池は礁の最も沖側にある「礁嶺(しょうれい)」とよばれ る礁の高まりによって、外洋と隔てられており、波穏やかな海域となっています。そこには、様々 な造礁サンゴがそれぞれの環境に対応して生息してます。ここでは裾礁を対象に、以下のような テーマで研究を行っています。
- 石垣島東海岸のサンゴ礁の海水流動
- 石垣島白保サンゴ礁の温熱環境と造礁サンゴの分布
- 石西礁湖における海水流動および濁質、熱、サンゴ幼生輸送特性解明
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石垣島東海岸のサンゴ礁の海水流動 †
裾礁は非常に複雑な地形をしており、海水流動はその地形によって大きく影響を受けます。 灘岡研究室では、地形効果を考慮した「多点係留系による現地観測」と「数値流動シミュレ ーション」を用いて流動特性の解明を試みています。
礁嶺にはところどころ切れ込みがあり、大きなものは「クチ」と呼ばれそれぞれに名前がついています。石垣島東海岸では、北からトゥールグチ、イカグチ、モリヤマグチ、ブーグチと4つあり、ブーグチの南には干潮 時に干上がってしまう浅瀬「ワタンジ」が陸から礁嶺までつながっています。この海域の中央付近に は轟川の河口があり、出水時にはここから赤土の流入がみられます。 詳細な地形効果に着目した数値シミュレーション結果から、海水流動はクチに影響されていることがわかりました。
石垣島白保サンゴ礁の温熱環境と造礁サンゴの分布 †
サンゴ礁は、様々な造礁サンゴが”棲み分け”をして分布していることが知られています。こうした分布は、地形と物理環境(水温や流れなど)に大きく依存し ていますが、数km程度の範囲での局所的な環境はよく調べられていません。 我々の現地観測の結果、石垣島の白保サンゴ礁では、それぞれの造礁サンゴの分布と局所的な温熱環境特性がよく一致していることがわかりました(図3, 4)
図1 白保サンゴ礁 北側礁原 沖側の礁嶺近くで造礁サンゴの発達がよい | 図2 測器設置の様子 (流速計,波高計,水温計 |
図3 測器設置地点と造礁サンゴの分布 (茅根 1999) | 図4 温熱環境特性の違いによるゾーン分け |
石西礁湖における海水流動および濁質、熱、サンゴ幼生輸送特性解明 †
石西礁湖は石垣島と西表島の間に広がるサンゴ礁海域で、海域内の4地区が海中公園地区に指定されています。 ここにはサンゴがたくさん生息していて、他のサンゴ礁海域へのサンゴ幼生供給源としてとても期待されています。け れども、近年、オニヒトデによるサンゴの食害や赤土汚染、高水温による白化などによって、サンゴが減って きてしまいました。
私たちは、この石西礁湖の保全のため、その基礎となる物理要因(海水流動・水温・塩分・濁りなど)の連続観測や、サンゴの産卵時期にサンゴ幼生の分布について調べています。