オニヒトデ幼生広域輸送過程オニヒトデは、現在、琉球列島などで大量発生してきています。オニヒトデ大量発生の原因解明のためには、これまでブラックボックスであったオニヒトデの浮遊幼生が実際の海でどのような挙動をしているのかを研究する必要があると考えています。我々の研究室では、他の期間との共同研究によって以下を明らかにしようとしています。

  • モノクローナル抗体を用いたオニヒトデ幼生の種判別法の確立
  • 野外採集によるオニヒトデ幼生の分布調査
  • 現地観測および数値シミュレーションによる海水流動パターンの解明
  • 遺伝子を用いたオニヒトデ集団解析

モノクローナル抗体を用いたオニヒトデ幼生の種判別法の確立

オニヒトデの幼生を実際の海で採集しようとすると、一緒にたくさんの他のプランクトンがとれます。その中からオニヒトデ幼生だけを探したいのですが、困ったことに、この幼生は同じサンゴ礁にすむほかのヒトデと形態がそっくりで見分けるのが非常に困難です。そこで、簡易にオニヒトデ幼生を識別するため、モノクローナル抗体の作成を試みています。

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図 モノクローナル抗体によって発色したオニヒトデ幼生

モノクローナル抗体を作れば蛍光顕微鏡のもと、オニヒトデ幼生だけを緑色に発行させ、種判別することが可能になります。この研究が成功すれば、これまでわからなかったオニヒトデの幼生期の野外での挙動を調査することが可能となります。

野外採集によるオニヒトデ幼生の分布調査

実際の海において、オニヒトデ幼生がどのように分布しているのかを、船を出してプランクトンネットやポンプを用いて採集して調べます。2003年には、パラオで採集したサンプル中に、オニヒトデらしき幼生が数個体みつかりました。もし、これがオニヒトデ幼生であることが確認されれば、世界で初めて野外で発見されたことになります。

現地観測および数値シミュレーションによる海水流動パターンの解明

浮遊幼生がどこにたどり着くかは、生物的には幼生の浮遊期間や行動によりますが、物理的には海流流動パターンに大きく依存しています。

ここでは、流れの現地観測と、いくつかの数値シミュレーション開発によって、サンゴ礁周辺という小さな空間スケール(数十km)から、太平洋といった大きな空間スケールでの幼生の分散パターンを解明しようとしています。

遺伝子を用いたオニヒトデ集団解析

大量発生したオニヒトデをいくら眺めても、どのような経緯で幼生が運ばれてきたのかはわかりません。しかし遺伝子情報を解析することによってオニヒトデ集団の歴史を予測することが出来ます。これまではアロザイムというタンパク質レベルでの解析が進められてきましたが、ミトコンドリアの遺伝子配列や、マイクロサテライトといった新しい分子マーカーを開発し、用いることで、これまであいまいだった集団間もより高精度に解析できるようになります。さらにミトコンドリアの遺伝子情報が得られれば種判別ツールも作成でき、モノクローナル抗体の開発と同時平行ですすめています。

用語解説

  • モノクローナル抗体

    生物はみな、病原菌などから自分の体を守るために、異物が入ってくるとそれを認識して排除する仕組みを持っています。この異物を認識する物質を抗体といい、ある異物に対してはある特定の抗体というように1対1対応の非常に特異性の高い物質です。普通はこの抗体を作る細胞は数回分裂したらすぐに死んでしまい、単独で培養して増やすこと(クローン化)は不可能です。しかし、無限に分裂を繰り返すがん細胞と融合させることによって、一種類の抗体だけ(モノ)を無限に増殖(クローン)させるモノクローナル抗体を作ることができます。

    この仕組みを応用し、マウスにオニヒトデ幼生タンパク質を注入すれば、オニヒトデ幼生だけに反応するモノクローナル抗体を作ることができます。さらにこの抗体のみを光らせる抗体(2次抗体)と組み合わせれば、結果、オニヒトデ幼生だけを光らせることが可能になります。

  • ミトコンドリアの遺伝子配列

    ミトコンドリアは細胞小器官のひとつで、植物の葉緑体と同様に独自の環状DNAを持ち複製します。遺伝方式は一般に母系遺伝で、母親のミトコンドリアDNAはそっくり子供に受け継がれます。一般にミトコンドリアの塩基配列は生物の核のDNAよりも変異速度が速いため、種判別したり、同じ種内の集団間の距離を調べるのに向いています。

  • マイクロサテライト

    生物の核のDNAには単純配列リピート領域(たとえばATATATATATAT …など)がいくつかあります。この部分は非常に変異が早く、集団間はもちろんのこと、うまくいけば集団内の個体識別もできることがあります。

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